PPP(購買力平価)は、為替レートは二国間における同じバスケット(サービスやモノをまとめた総称)の相対的価格によって決まるという考え方に基づいている。物価上昇率が変われば、為替レートは逆行し均衡するはず。そのため、購買力平価説では、物価が上昇すれば為替レートは均衡するために下落する事になる。
物価上昇▶︎相対的に▶︎通貨下落(インフレ)
物価下落▶︎相対的に▶︎通貨上昇(デフレ)
購買力平価の通貨バスケット
購買力平価を算出するためのバスケットは、GDP(国内総生産)と同じ。購買力平価のバスケットには、消費者向けのモノとサービス、公共財・設備財・公共事業が含まれる。
消費者向け項目
食品、飲料品、タバコ、衣料品、靴、家賃、水道代、ガス代、電気代、医薬品および医療サービス、家財道具、家電製品、自動車などの自家用車両、娯楽機器、娯楽文化サービス、電話・通信サービス、教育、介護および家事代行サービス、維持・修繕サービス
ビッグマック指数
ビッグマック指数は、購買力平価の最も有名な事例。これは、ビッグマックハンバーガーの値段は、日本でもアメリカでも、どこの国でも同じであると仮定して為替レートを計算する方法。
それを実際の為替レートと比較することで、通貨が過小評価されているのか過大評価されているのかを知る鍵になる。これは、為替レートを正しく評価するものではなく、為替レート理論を分かりやすく認識する方法になる。
事例
2015年1月、中国人民元は1ドル当たり6.2元だった。当時ビッグマックは米国で4.8ドルだった。中国では17.8元で販売されていたため、為替換算すると中国で販売されていたビッグマックは、2.8ドルになる。米国と中国のビッグマックの値段を比較すると、人民元は40%以上も過小評価されていたことになる。
OECD購買力平価指数
OECD(経済協力開発機構)は、OECDとユーロスタット(欧州連合統計局)は、OECDユーロスタット購買力平価を共同で算出している。どの通貨が対ドルで過小評価、または過大評価されているのかを見ることができるサイトはこちら。
このサイトは、主要先進国の価格水準一覧を表で公開している。
各欄に、代表的なサービスやモノのバスケットを購入するために必要な各国の通貨単位が記載されている。(100単位)
通貨の購買力平価と、実際の為替レートを比較したチャートもあり、最新の為替レートで反映されるため、旬な通貨を見つけるのに何かと便利な道具。また最新の購買力平価も年2回更新されるため、かなり精度の高い情報を見ることができるのでオススメ。
ただし、購買力平価はOECDが独自調査した結果から導き出された数値であるため、絶対的なものではない。計算方法が違えば、別の購買力平価が算出されることだけは理解して欲しい。
購買力平価には限界がある
購買力平価で値動きを見る際には、長期的なファンダメンタルズ分析にのみ適用するべきだと考える。経済力と購買力は最終的には均衡していくが、それは1、2年と言った短いスパンではなく5-10年の歳月を要する。そのため、期限付きのオプション取引等では使えない。
購買力平価の問題点は、関税・割当量・税金が考慮されておらず、貿易に関して簡素化されていることを前提に考えられていること。例えば、日本政府が鉄鋼の輸入に新たな関税を課すことを決定すれば、国内工業の製品コストは上昇する。しかし、購買力平価の米国欄には、その増加分が反映されない。
購買力平価を比較検討する際には、インフレや金利差、経済指標・経済報告、貿易動向や政治情勢などの要素も加味しなければならない。このことから、購買力平価説は、トレーダーが為替相場を判断するための一要素に過ぎないと言うことだ。